倉庫から店舗への運搬費用に関する経理処理について
倉庫から店舗への運搬費用に関する経理処理について、お教えいただきたくお願い申し上げます。
飲食料品を扱う小売業を営んでおります。
店舗で使用するため、業務用冷蔵庫を購入しました。
ただし、購入後すぐに使用はせず、倉庫に置いておきました。
約1年ほど経って、倉庫から店舗に運搬し、使用を開始しました。
この場合において、この運搬費用の経理処理は、次のいずれなのでしょうか?
①事業の用に直接用した費用として、資産(器具備品)
②運搬によって価値が向上したわけでは無いから、費用(運搬費)
恐れ入りますが、根拠を含めてお教えいただきたくお願い申し上げます。
税理士の回答
ご回答します。
固定資産を購入した時に取得価額にすべき金額は下記のように定められています。
(法人税法施行令 第54条)
1.購入対価
2.購入のために要した費用(引き取り運賃、購入手数料等)
3.事業の用に供するために直接要した費用(検収費、据付費、整備費、試運転費用等)
このほか、取得価額に算入することができる費用として、選択できる下記の費用があります。
(法人税法基本通達7-3-3-2)
1.不動産取得税等
2.登録免許税、そのた登記・登録に要する費用 ほか
また、機械装置の移設に要した費用の額は修繕費に該当するという通達があります。
(基本通達7-8-2 の②)
施行令 第54条の「3.事業供用費用」は、購入から事業供用までの費用を一貫して取得価額として把握し、減価償却を開始するという考えです。
事業供用費用を別の費用とし、その金額を購入対価から値引きしてしまうような、不公平な経理処理にならないようにする趣旨があると考えられます。
また、基本通達7-8-2の移設費用は、移設に解体を要するような機械装置について、すでに事業供用した後に移設することを前提にしているもので、その解体や設置費用を「通常の維持管理」「現状維持費用」として認識して資本的支出とせず、修繕費として一括損金を認めたものです。
ご質問の内容としては、
・購入後に使用せず倉庫保管していた冷蔵庫を、
・1年経過後に倉庫から店舗に移設し、使用を開始した
この時の運搬費用の経理処理が、「事業供用費用」か「移設の修繕費」のいずれか、というご質問でした。
業務用冷蔵庫は家庭用冷蔵庫と違い、店舗に設置する際には「移設費用」は発生すると想定できます。
基本通達7-8-2の機械装置の解釈を準用することができると思われますが、今回の移設費用は、「すでに事業供用した後に移設」したものではありません。
取得から事業供用まで時間は空いているものの、「通常の維持管理」や「現状維持費用」とは言えないでしょう。
従って、取得と「事業供用費用」の支出タイミングが、空いてしまったものの、事業供用費用の資本的支出と考えるのが適正と考えます。
だたし、購入後に事業供用せずに倉庫保管していたということは、何らかの事情があるのかもしれません。
今回のご質問は、個別事案のため、状況により解釈が変わることがあります。
上記の私の回答は、一つの考え方である、ととらえ、顧問税理士や税務署へご相談することをお勧めします。
ご回答ありがとうございました。
資産の取得の範囲がどこまでで、資本的支出の範囲はどこからなのか、私にはよくわからなかったため、お伺いいたしました。
大変ご丁寧な説明で、私にも理解することができました。
本当にありがとうございました。
本投稿は、2021年09月20日 11時31分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。