譲渡所得の計算方法は?課税対象資産や利益がでたときの確定申告手続きまとめ

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譲渡所得の計算方法は?課税対象資産や利益がでたときの確定申告手続きまとめ

監修: 加瀬 直樹 税理士・不動産鑑定士

資産の譲渡によって得た利益は「譲渡所得」といい、確定申告が必要なものがあります。資産といえば、土地や建物、株式などがイメージされると思いますが、実際にはどのような資産を譲渡した場合に課税対象となるのでしょうか。

このページでは、課税対象となる資産からその税額の計算方法、確定申告手続きについてまとめました。

目次

譲渡所得とは

資産を譲渡した時に得た収入のことを譲渡所得といいます。譲渡とは、特定の財産や権利を、有償・無償に関わらず、他人に譲り渡すことを指します。

他の所得と同様に、譲渡所得も住民税や所得税の課税対象です。ただし、資産の種類によって所得の計算方法や税率が異なったり、課税対象とならない資産もあります。

課税対象にならない資産

課税対象となる資産は土地や借地権、建物、株式だけでなく貴金属や美術品、特許権など多岐にわたります。

一方で課税対象とならない資産は限られるため、課税対象外のすべての資産が譲渡所得の課税対象と覚えておくとよいでしょう。

課税対象とならない資産は以下のとおりです。

  • 破産手続きや債務の弁済のために、公権力が強制的に資産を譲渡したことによる所得。またはそれに準じる場合で、譲渡代金の全てが債務の弁済に当てられた場合
  • 国税庁長官の承認を受けた財産の寄付
  • 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の所得
  • 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
  • 中小企業の取締役等が、債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
  • 不動産以外の生活に用いる財産(生活用動産)の譲渡による所得
    ただし貴金属や宝石、書画、骨董などで1個または一対の価額が30万円を超えるものは課税されます。

事業所得や雑所得となるもの

資産の譲渡による所得でも、その資産によっては、「事業所得」や「雑所得」として課税されるものもあります。

譲渡所得と間違えやすい主なものは以下のとおりです。所得の種類ごとに課税の計算方法が変わるので覚えておきましょう。

譲渡される資産の種類区分
事業用の棚卸資産事業所得又は雑所得
10万円未満の減価償却資産事業所得又は雑所得
山林山林所得、事業所得又は雑所得

譲渡所得の確定申告が必要になる人

譲渡所得がある人で、以下の条件に当てはまる場合は確定申告が必要になります。

  • 給与所得者:給与所得や退職所得以外の譲渡所得を含めたすべての所得が年間20万円以上ある、または、給与収入が年間2000万円以上ある
  • 給与所得者以外:納付税額が発生する

たとえば、個人で所有していた宝石を、買取店で100万円で買い取ってもらったケースで考えてみましょう。

まず宝石の購入価格が120万円だった場合、譲渡によって利益は出ないため、確定申告は不要です。

また、購入価格が80万円だった場合は、100万円 − 80万円 = 20万円の利益が出ることになりますが、譲渡所得には年間50万円までの控除が設けられているので、この場合は確定申告も不要です。

一方で、購入価格が50万円以下のときには、利益が50万円以上となるので確定申告が必要になります。

申告期限と必要書類

確定申告は、1月1日~12月31日の間に得た所得の申告を、原則2/16~3/15までに行います。申告の際には、下記のような書類が必要になります。

  • 確定申告書
  • 確定申告書第三表 ※分離課税の場合
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 資産購入時の売買契約書
  • 資産売却時の売買契約書
  • 仲介手数料・印紙税など売却費用の領収書

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、資産の売却金額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた金額に課税されます。

具体的な計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得 = 譲渡益 - 特別控除(最高50万円※1)
譲渡益 = 売却金額 - (取得費※2 + 譲渡費用※3)

なお特別控除には適用順序があり、たとえば土地・建物以外の総合課税となる資産の売却の場合には、まず「短期譲渡所得※4」から控除し、控除しきれない金額があればさらに「長期譲渡所得※4」から控除します。

特別控除(※1)

通常であれば特別控除額は最高50万円ですが、土地建物を売ったときの譲渡所得にはさらに特例が設けられています。

たとえば、「マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例」や「公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例」などです。

適用できるものがないか事前に確認しておくようにしましょう。

取得費(※2)

宝石など貴金属であれば購入費のことですが、土地の場合は、買い入れたときの購入代金だけでなく購入手数料などを含んだ合計額のことです。建物の場合は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額となります。

しかし購入者が自分自身とは限らないので、取得費がわからない場合もあるでしょう。この場合には、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。

たとえば、取得費不明の土地建物を1,000万円で売却した場合には、売却額の5%相当額である50万円を取得費にできるということです。

なお、実際の取得費が売却額の5%より少ないときにもこの割合を適用することができます。

譲渡費用(※3)

資産を売るために支出した費用のことで、土地や建物の場合は仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人などに支払った立退料、取壊し費用などのことです。

短期譲渡所得と長期譲渡所得(※4)

譲渡所得は、所有期間によって「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2つに区分されます。

土地・建物の売却については、短期譲渡所得は「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの」、長期譲渡所得は「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの」をいいます。

他方、土地・建物以外の総合課税となる資産の売却については、短期譲渡所得は「取得したときから売ったときまでの所有期間が5年以内のもの」、長期譲渡所得は「取得したときから売ったときまでの所有期間が5年を超えている場合」をいいます。

ただし次のいずれかに当てはまる場合には、所有期間が5年以内の場合でも長期譲渡所得となります。

  • 自分が研究して取得した特許権や実用新案権などの工業所有権
  • 自分が著作した著作権
  • 自分で発見した鉱山などの採掘権
  • 自分の育成による育成者権
  • 配偶者居住権・配偶者敷地利用権のうち、一部の場合

譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得は、譲渡した資産の種類によって「総合課税」か「分離課税」かに分けられ、別々に税額を計算します。

  • 分離課税になるもの:土地・建物など不動産、株式等
  • 総合課税になるもの:その他の資産(ゴルフ会員権や金地金、機械など)

分離課税は他の所得と合計せずに、その所得だけに独自の税率をかけて計算します。

総合課税は、事業所得や給与所得といった「総合課税が適用される他の所得の金額」と所得額を合計し、税額を計算します。また、このとき合計する譲渡所得額は、短期譲渡所得であれば全額、長期譲渡所得であれば1/2の額が対象となります。

それぞれかかる税率については、下記のとおりです。

譲渡所得税率
分離課税短期譲渡所得39.63%
(所得税30.63% 住民税9%)
長期譲渡所得20.315%
(所得税15.315% 住民税5%)
株式等(所有期間は加味されない)
総合課税短期譲渡所得5〜45%
(上記に住民税の所得割10%と均等割、復興特別所得税が加算)
長期譲渡所得

なお、居住用不動産の譲渡の場合には、所定の適用要件を満たしたものについては「10年超所有軽減税率の特例」があり、分離課税として以下の税率を適用することができます。

  • 課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%・住民税4%)
  • 課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%)

譲渡所得申告の税理士報酬

前述のとおり、譲渡所得は総合課税と分離課税に分かれたり、所有期間によって税率が変わったり、他の所得よりも少し複雑になっています。

特に居住用不動産であれば、10年超所有軽減税率の特例など知っておくべき制度も多数あるため、正確な申告をするには税理士の力を借りるのもひとつの手段です。

かかる費用としては8万円~15万円程度が相場で、譲渡所得の金額や譲渡所得以外の所得状況によって異なります。

おわりに

資産を譲渡(売却)して収入を得たら、確定申告が必要になることがあります。やり方がよくわからない、やる時間がないということであれば税理士に確定申告を代行してもらうことも検討してみるとよいでしょう。

「どんな税理士がいいのか」「具体的に費用はどれくらいかかるのか」など、税理士選びでお困りの方は、税理士ドットコムの税理士紹介サービスまでお問い合わせください。経験・実績豊富なコーディネーターがご要望に合う税理士をご提案します。

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