「未払金・未払費用」を活用して決算後に節税するには?具体例や仕訳方法を解説

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「未払金・未払費用」を活用して決算後に節税するには?具体例や仕訳方法を解説

監修: 福留 聡 税理士・公認会計士・行政書士

決算日後でも経費計上できるものとして「未払金」と「未払費用」があります。これらは営業活動以外で発生した費用のうち、まだ支払いが済んでいないものを計上するときに使用する科目です。決算時点で支払いが翌期になる未払金・未払費用があれば、それらの費用を未払計上することで当期の節税対策になります。

この記事では、「未払金・未払費用」を使った節税方法と計上する場合の注意点、仕訳方法について解説します。

目次

未払金・未払費用の見直しが節税対策になる

通常、必要経費を損金とするためには、決算の前に支払いを終えている必要があります。

しかし、以下のような一定の条件を満たす場合においては、未払いの状態でも、例外的に「未払金」や「未払費用」として、決算日後でも損金算入することができます。

  • 決算日までに支払いの義務が確定している
  • 決算日までに支払いの義務に基づく契約をしている
  • 決算日までに支払うべき金額を明らかに計算できる

つまり、まだ支払いをしていない費用を未払金や未払費用として漏れなく計上すれば当期の利益を圧縮でき、その分の節税効果が期待できるということです。

なお、ここでいう決算日は法人なら事業年度終了日、個人事業主なら12月31日を指します。

ただし未払計上は、翌期に計上するはずだった経費を前倒して当期に計上しているに過ぎません。そのため、翌期の方が売り上げが大きい場合には、結果的に節税効果としては得策ではなかったというケースも起こり得ます。

決算後に未払計上できる費用の具体例

決算後に「未払金」や「未払費用」として計上できるものとして、以下のような例があります。

広告宣伝費

広告などの出稿料は広告宣伝費としてサービスを受けてから支払います。そのため、事業年度をまたがるような場合は、翌年ではなく当年に未払金として計上することができるのです。

消耗品費

文房具や家電製品といった消耗品をクレジットカード払いや請求書払いで購入して、支払いが翌事業年度になるとき、未払金として計上することができます。

税金

税額が通知されているけれども、納付していない税金も未払金として計上することができます。具体的には、消費税、不動産取得税、自動車税、固定資産税、都市計画税、利子税などが該当します。ただし、延滞税は損金不算入となります。

なお、消費税の未払計上は税込方式を選択している場合に限られます。

決算賞与

決算賞与については、下記の条件を満たすことで未払金として処理することが可能になっています。

  • 決算期末までに同時期に支給を受ける従業員すべてに支給額を通知している
  • 決算後1か月以内に支払う
  • 事業年度において未払金として計上している

ただし、給与規定の内容によっては条件が満たされず、税務調査で否認されてしまう可能性があります。未払計上する前に、一度確認しましょう。

社会保険料

健康保険や厚生年金などの「社会保険料」は、従業員を雇用している事業主が一定の負担をしています。

その事業主負担分については一般的に、当月分を翌月に支払っているため、決算時ではなくても未払費用として計上している場合が多いでしょう。一方で支払い時に費用として計上している場合には、決算月の分は翌事業年度に計上せず、未払費用として決算月当月に計上することで節税になります。

労働保険料

労災保険と雇用保険からなる「労働保険料」は、当事業年度分の概算金額を毎年7月10日までに申告し、前事業年度分の確定金額を同期限まで納付します。

このとき、会社負担分の計上を申告書の提出日にすることで、未払費用として当事業年度に計上することが可能です。

分割納付期限より前に決算期がくる場合

概算保険料の金額が40万円以上になる場合、一括での納付方法のほかに、分割での納付を選択することもできます。分割納付の期限は7月10日、10月末、1月末となるため、7月決算なら残り2期分を、12月決算なら残1期分を未払費用として計上できます。

申告書の提出前(3〜6月)が決算期の場合

確定保険料と概算保険料に差分が生じ、不足分が発生する場合、当事業年度の7月10日に支払うことになります。

よって労働保険料の申告書を提出する前であっても、3〜6月末が決算期となる場合には、不足分を未払費用として計上できます。

なお、保険料については社会保険料や労働保険料以外の生命保険や損害保険の保険料についても未払金として計上できます。

人件費

給与を「末締め翌月払い」にしている会社であれば、決算月であっても通常どおり未払費用として計上することでしょう。

一方で「15日締め」「20日締め」などの末締め以外の場合、決算月に関しては、締め日〜決算日までの分を日割りにして未払計上することができます

役員報酬は日割り計上できない

役員報酬は日割り計上ができません。役員は労働契約ではなく経営委任契約となることから、報酬を日割り計算することはできないと決められています。

ただし、役員報酬のうち使用人兼務役員の使用人の部分については例外として日割り計上できるとされています。

水道光熱・通信費

いわゆる電気代、水道代、ガス代などの水道光熱費や電話料金、プロバイダ料金などの通信料も支払いが使用期間の翌月になるため、未払費用として計上することができます。

使用期間が決算日をまたいでいる場合には、決算日までの分を日割りにして未払計上できます

家賃などの賃借料

事務所や店舗を借りているような場合、いわゆる賃借料が発生します。この支払いが後払い方式の場合、当月分を今期分の未払費用として計上することができます。

リース料

リース料金も後払い方式の場合は、未払費用として計上することができます。ただし、1年以上の長期にわたるようなリースにおいては、長期未払金として取扱いが異なります。

支払利息

融資などの借入金がある場合、後払いの利息分については未払費用として計上できる場合があります。

具体的には、借入日以降の日から決算期末日までの期間の後払い利息分を未払費用として計上します。

未払金・未払費用の違い

「未払金・未払費用」は似た性質の勘定科目ですが、実際どちらの科目を使うべきかというと、税務上はどちらでも構わないとされています。

一方で、会計上は費用の発生に継続性があるかどうかで区別すべき、とされています。

具体的な例を挙げると、備品をクレジットカードで購入した場合は、継続性のない単発の費用なので「未払金」となります。一方で、インターネット回線利用のためのプロバイダー契約などは、継続的に発生する費用であるため「未払費用」として計上するのがよいでしょう。

翌年度以降は一度決めたルールに従って、同じ勘定科目を継続して使用します。なお、上記の条件を満たす場合でも、売上原価となる材料の仕入れなど営業活動で発生した経費は「買掛金」で処理します。

長期未払金となるもの

未払金のなかでも、支払完了が決算日から1年以上後となるものは「長期未払金」として計上します。たとえば、機械設備や車両、不動産などの固定資産を分割払いで購入したときが該当します。

また長期未払金のうち、決算日の翌日から1年以内に支払いが発生する分に関しては「1年内長期未払金」として振替仕訳をします。

長期未払金

たとえば、100万円の機械設備を24回払いで購入し、決算期までに3回分の支払いが済んでいるとします。すると残りの支払は21回分ありますが、そのうちの12回分は「1年内長期未払金」、9回分の支払い金額は「長期未払金」となります。

さらに翌期末には、長期未払金とした残りの支払い分が1年以内に支払われることになるため、今度は「未払金」に振り替えます

このような処理をしなくても税務上では影響はありませんが、会計上は必要であり、財務状況の正確な把握のためにはきちんと処理をしましょう。

未払金・未払費用の決算整理仕訳

当期の費用として計上できる未払金や未払費用があったら以下のように会計処理(決算整理仕訳)を行います。

【例】決算月(4月)の電気代が2万円で、決算日が15日だった場合

決算整理仕訳
借方貸方
水道光熱費
(日割り計上分)
10,000円未払金10,000円
翌期に上記代金を支払ったときの仕訳
借方貸方
未払金
(日割り計上分)
10,000円普通預金20,000円
水道光熱費10,000円  

【例】支払いが翌期になるインターネット回線のプロバイダ契約をしたとき

決算整理仕訳
借方貸方
通信費10,000円未払費用10,000円
翌期に上記代金を支払ったときの仕訳
借方貸方
未払費用10,000円普通預金20,000円

翌期の会計処理の注意点

未払金や未払費用を計上したあとは、翌期の会計処理も忘れてはいけません。

実務上では、翌期首に再振替仕訳を行うことはほとんどありませんが、現金主義の場合や前期・前々期の比較を重視するならば、仕訳を行いましょう。

なお、会計上の原則として、同じ未払金・未払費用は毎期同様の処理を行う必要があります。そのため、当期末に未払計上したものを翌期首に再振替仕訳をしたのであれば、翌期末も同様の処理を行うようにしましょう。

翌期に支払義務が消滅したときの対応

未払計上していた契約が解除となり、支払いの義務が消滅するような場合もあるでしょう。その場合には債務免除益や雑収入として会計処理を行います。

10万円のリース料を未払費用として計上していて、リース契約を解除した例
借方貸方
未払費用100,000円債務免除益100,000円

おわりに

未払計上は本来、翌期に含めるはずの経費を当期に計上してしまうだけなので、結果としてあまり劇的な節税対策にはなりません。

もっとも、未払計上を早めることにより、多少なりとも資金を手元に残すことでキャッシュフローの改善には効果があるといえます。

未払計上による節税対策が効果的なのは、決算後に予想以上に利益が発生し納税金額が大きくなるときや、新規事業の推進などにより翌期の利益が低くなる見込みがあるような場合などです。

そもそも、未払計上以外の節税方法を検討したほうが効果的なケースもあるので、未払計上するかどうかの見極めは、税理士に相談して行うことをおすすめします。

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