パートや派遣社員を正社員化するときに活用すべき「キャリアアップ助成金」とは?

「助成金」とは、資金調達の方法のひとつで、融資とは異なり返済義務がありません。助成金は大きく分けると雇用関係の助成金と、研究開発型の助成金の2つに分類されます。
今回はその中でも非正規雇用の方(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など)のキャリアアップに取り組む会社を支援する「キャリアアップ助成金」をご紹介します。
この助成金を活用し、人材確保や優秀な人材の流出を防ぐ対策などとして、非正規社員の方の正社員へ転換を検討してみてはいかがでしょうか。
目次
「キャリアアップ助成金」とは
雇用形態は多様化しており、派遣社員、契約社員、嘱託、パート、アルバイトなどいろいろな形態があります。
そのような非正規社員から正社員へ転換すると支給される助成金があります。それがキャリアアップ助成金です。
「キャリアアップ助成金」の7つの種類
2018年現在に用意されている「キャリアアップ助成金」は全部で7コースで、適用条件はそれぞれ以下の通りとなっています。
1 正社員化コース
有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等をした場合
2 賃金規定等改定コース
有期契約労働者等の賃金規定等を改定した場合
3 健康診断制度コース
有期契約労働者等に対し、労働安全衛生法上義務づけられている健康診断以外の一定の健康診断制度を導入し、適用した場合
4 賃金規定等共通化コース
有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を設け、適用した場合
5 諸手当制度共通コース
有期契約労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を設け、適用した場合
6 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を講じ、新たに被保険者とした有期契約労働者等の基本給を増額した場合
7 短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、当該労働者が新たに社会保険適用となった場合
※短時間労働者の週所定労働時間を1時間以上5時間未満に延長し、当該労働者が新たに社会保険の適用となった場合も、労働者の手取り収入が減少しないように2または6と併せて実施することで一定額が助成されます
なお、2017年度に設けられていた人材育成コースは「人材開発支援助成金」に統合されましたが、2018年3月31日までに訓練計画届の提出がなされている場合に限り、引き続き支給申請することは可能です。
この記事では、キャリアアップ助成金の中でも、いろいろな企業に該当しやすく使いやすい「正社員化コース」について解説します。
「正社員化コース」正社員に転換したら助成金はいくらでる?
有期契約社員等を正社員等に転換または直接雇用した場合に助成される金額は次のとおりです。
- 有期→正規:1人当たり57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
- 有期→無期:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
- 無期→正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
2018年より、申請上限は合わせて1年度1事業当たり20人までとなっています。
<>は生産性の向上が認められる場合の助成額、( )は大企業の助成額です。
生産性の向上が認められる場合
次の「生産性要件」を満たす場合に、<>の助成の割増等が行われます。
助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年前に比べて6%以上伸びていること。または、その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※金融機関から一定の「事業性評価」を得ていることが条件)
「生産性」の算出方法
(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
また、上記金額に加え、次の条件が重なればさらに増額されることになります。
派遣労働者を派遣先で正規雇用で直接雇用する場合に助成額が加算されます。
【対象:有期→正規、無期→正規】1人当たり28万5,000円<36万円>(大企業も同額)加算
母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、若者認定事業所における35歳未満の対象労働者を転換等した場合に助成額が加算されます。
【対象:有期→正規】1人当たり95,000円<12万円>(大企業も同額)加算
【対象:有期→無期、無期→正規】47,500円<60,000円>(大企業も同額)加算
勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定した場合に助成額が加算されます。
【対象:有期→正規、無期→正規】1事業所当たり95,000円<12万円>(71,250円<90,000円>)加算
なお、2018年からは正社員化コースの支給要件として以下のふたつが追加されています。
- 正規雇用等へ転換した際、転換前の6ヶ月と転換後の6ヶ月の賃金を比較して、5%以上増額していること
- 有期契約労働者からの転換の場合、対象労働者が転換前に事業主で雇用されていた期間が3年以下に限ること
支給手続きについて
このキャリアアップ助成金の「正社員化コース」は、正社員等へ転換して申請するだけで支給されるわけではありません。
次の手順を支給申請までに行う必要があります。
- キャリアアップ計画の作成・提出(事前に転換・直接雇用を実施する日までに提出)
「キャリアアップ計画書」を労働局に提出し、確認・認定を受ける必要があります。 - 就業規則等に転換制度を規定
「キャリアアップ計画書」を労働局へ提出前に転換制度を就業規則等に規定していた場合でも対象になります。しかし、その場合でも「試験等の手続き、対象者の要件、転換実施時期」の規定が必要になります。詳しくはお近くの社会保険労務士へお尋ねください。 - 正規雇用等への転換・直接雇用を実施(転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施する)
- 転換後6か月後に助成金支給申請を行う 転換後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
※支給申請の期限があるので注意が必要です。
このように、キャリアアップ助成金を受給するまでには、長い時間がかかります。正社員転換をしてすぐに受給できるものではないので注意が必要です。
おわりに
キャリアップ助成金は頻繁に改正が行われますので、常に情報収集しておくとよいでしょう。また、就業規則の改正を行ったり、各種諸条件がありますのでお近くの社会保険労務士にご相談して進めることをおすすめいたします。
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