ついにミネラルウォーター税か 生産量ぶっちぎりの山梨、財政再建でまさかの奇策
税金・お金

「南アルプスの天然水」「い・ろ・は・す」などの採水地である山梨県。富士山や甲斐駒ケ岳の恵みは、飲料メーカーの最新鋭の設備でペットボトルに充填され、各地に届く。その「日本一の水源」の地でミネラルウォーターに税金を課す議論が、いよいよ本格化する。
業界の反発もありかつて断念した構想が、県財政を改善させるためとして、よみがえった。長崎幸太郎・山梨県知事は3月15日、課税について議論する「検討委員会」を立ち上げ、検討を進める意向を表明した。
ネットなど一部では「山梨が強気だ」「他に移ればいい」との声もある。その「強気」はどこからくるのか。データをひもとくと、そこには採水地としての圧倒的な存在感があった。
●山梨のシェア1位は5年連続
いわゆるミネラルウォーターは、サントリーやコカ・コーラ、キリン、アサヒといった飲料メーカー大手だけでなく、中小の事業者も採水し商品化している。東日本大震災をはじめとした大災害を受け、備蓄向けの需要も増加。生産量は伸び続けている。
業界団体「日本ミネラルウォーター協会」の直近のまとめでは、都道府県別で山梨県のシェアは43.8%にのぼる(2017年)。2位の静岡県は半分以下の16.9%で、3位の鳥取県は10.6%、4位の兵庫県は3.7%、5位の岐阜県は3.6%となっている。
2位〜5位が束になってもかなわず、いかに山梨県の存在感が群を抜いているかがわかる。2013年〜2017年の5年間だけを見ても、山梨はシェアトップを走り続けている。
「税金が多少かかったとしても、そう簡単に他へは移れないだろう」と山梨県側が自信を持ったとしても不思議ではない。
●ねらいは「財政再建」、一般財源とする方向
ミネラルウォーター税を創設する提言は、県議でつくる「ミネラルウォーター税導入に関する政策提言案作成委員会」がまとめたもの。県議会で可決し、3月15日に知事に提出した。
山梨県税務課によると、提言では、課税対象を「県内の地下水を利用する行為」として、ミネラルウォーター製造だけに限定しなかった。
(1)すべての地下水に課税する案(2)ミネラルウォーターなど地下水を原材料にした商品に課税する案(3)地下水を原料にした製品を県外に移出する場合に課税する案、などの案が想定されるという。
さらに、使途を限定しない「法定外普通税」とし、一般財源として広く使えるようにする方向だ。つまり、ひっ迫する財政の再建に活用できるようにする。税務課は「具体的なことはまだ決まっていないが、4月からの新年度に議論を進めていく」と取材に答えた。
どれくらいの税収がありうるのか。単純に、1キロリットルあたり10円を課税すると仮定する。2017年の山梨県内での生産数量(ミネラルウォーター類)は142万7005キロリットルだったので、142億7005万円になる計算だ。
●業界団体「強く反対」「全く承服しかねる」
日本ミネラルウォーター協会など業界3団体は連名で2月、「導入に対し強く反対いたします」とする意見書を、関係する県議に対し提出した。2018年9月、12月に続いて3度目だ。
ミネラルウォーターだけでなく、すべての取水事業者の経営に多大な影響を与える可能性があるとし、業界の意見を聴く機会を設けないなかでの動きで「全く承服しかねる」と、十分な検討を求めていた。
今後、本格的な検討が進められるが、業界の根強い反発にどう向き合うか注目される。