「多額の寄付」も非課税に? 宗教法人の税金のしくみとは
税金・お金

安倍元首相銃撃事件をめぐり、世間から注目を集めている宗教法人。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)は、母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)へ多額の献金をしことで自己破産し、家庭崩壊を招いたことへの恨みをもっていたと供述しているとのこと。
気になるのが自己破産するほどの多額の献金だが、宗教法人は公益法人の一種であることから、受け取った寄付やお布施は、原則税金がかからないという。
そこで宗教法人にかかる税金のしくみを、冨田建税理士に聞いた。
●宗教法人でも「収益事業」は課税の対象に
「法人税法4条では、『公益法人は収益事業を行うときのみ法人税を納める義務がある』とし、同法の別表第二において『宗教法人も公益法人である』旨が明示されています。
よって収益事業、すなわち『宗教法人の本質とは離れた、通常の法人の営業活動と同様の利益獲得を目的とした営業活動』には法人税等が課税されます。
同じく不動産取得税についても、地方税法73条の4第2号において『宗教法人が宗教本来の目的に供する土地・建物については課税できない』とされており、固定資産税・都市計画税も、地方税法348条第2項第3号、および702条の2第2項で同様の扱いとされています。
それでは、収益事業とは何かという話ですが、国税庁作成の『宗教法人の税務』では、物品販売業や駐車場業など、収益事業として34事業が明記されています。
よって、宗教法人であっても、これらに該当する場合については法人税等が課税されます。
●収益事業でも事業性のない低額な宿泊料などは非課税
ただし、もっぱら参詣に当たって神前、仏前等にささげる線香やろうそく、お守り、お札など<具体的な見返りを求めず祈祷に捧げる金銭>、つまり喜捨金(きしゃきん)としての性質を有する物品の売買は、収益事業には該当しません。
そのほかに、宗教活動に関連して利用される簡易な共同宿泊施設で、その宿泊料の額がすべての利用者につき1泊1,000円(食事を提供するものは2食付きで1,500円)以下であるものについても、収益事業には該当しないとされています。これは、事業性があるとは言えない低額な収入であるからでしょう。
一方で、宗教法人で働く人の給与や退職手当の所得税等の源泉徴収など、宗教法人の本質とは直接関連しないものは、通常の法人と同様の手続きが必要です。
●寄付に対する課税制度は見直す余地があるのでは
ここからは私見。現行の税法は『その宗教法人や寄付者の規模・内容に比べ過大な寄付を得た場合も、収益事業と無関係なら法人税等は課税されない』形態です。
もし、宗教法人への寄付額の上限を規制するなどの抜本的な法整備が講じられない場合、課税の公平にも配慮する意味も込めて、税法で宗教法人や寄付者の規模や内容に応じて、寄付額が過大か否かの基準を設定し、過大な場合は通常同様に課税する制度設計にしてもと思いますが、いかがでしょうか。」
【取材協力税理士】
冨田 建税理士・不動産鑑定士・公認会計士
全国43都道府県で不動産鑑定業務の実績の傍ら、各種講演・執筆も行う。令和3年に不動産評価や相続・公示価格や立退料等につき書いた「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓し好評で増刷するなど、勢力的に活動中。
事務所名 : 冨田 建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所、冨田会計・不動産鑑定株式会社
事務所URL:https://tomitacparea.com