不動産売買の前に知っておくべき「中間省略」とは?その見分け方とは?

所有している不動産を売却するなら、少しでも高く売りたいと考えるでしょう。ただし「中間省略」と呼ばれる方法で売却すると、売却価格が相場よりも低い金額になる可能性があるため注意が必要です。 この記事では「中間省略」とはなにか、不動産取得税や登録免許税に与える影響について解説します。
目次
中間省略における不動産売買の流れ
通常、不動産を売却する場合、次のような流れで手続きが進みます。
- 不動産会社に売却を依頼する(「媒介契約」を締結する)
- 不動産会社が買主を募集する
- 買主が見つかり「買付申込」が入る
- 売買契約を締結する
- 決済・引き渡し(売買契約から1か月後くらいが目処)
以上が一般的な不動産売買の流れです。
これに対し中間省略の流れは次のようになります。
- 不動産会社に売却を依頼する(「媒介契約」を締結する)
- 不動産会社が提携先不動産会社から買付をもらう
- 第三者への「中間省略登記」を可能とする売買契約を締結する
- 買主である不動産会社が、転売先となる買主とさらに売買契約を結ぶ
- 転売先が決まった段階で決済、引き渡しが行われる
これが中間省略の大まかな流れになります。
通常の売買とは少し違うことがおわかりいただけたかと思います。
「中間省略」ってなに?
「中間省略」とは、買主が引き渡しを受ける前に次の買主を見つけて、買主への「所有権移転登記」を経由せず、直接転売先に所有権を移転して売却することを言います。 さらに具体的に言うと、ある程度転売先の目星がついている状態で、不動産会社が一旦買主から買い取り、そこに金額を上乗せして転売先に売る、ということです。
たとえば売主Aが買主Bと2000万円の売買契約を締結します。その後、買主Bはその物件を2300万円で買ってくれる買主Cに転売します。
通常の流れですと、売主Aから買主Bに「所有権移転登記」をして決済引き渡しが完了した上で、買主Bから買主Cにさらに「所有権移転登記」をしなければなりません。
ところが中間省略での売却の場合は、売主Aから転売先である買主Cに直接「所有権移転登記」を行います。つまり、買主Bへの登記を「省略」して一気に買主Cに所有権移転登記をするため、「中間省略」というのです。
「中間省略」の目的
では、なぜ中間省略での売買契約が発生するのでしょうか。
不動産を購入して「所有権移転登記」をすると、次の2つの税金が課されます。
- 不動産取得税
- 登録免許税
「不動産取得税」とは、不動産を売買や贈与などで取得した場合に、都道府県が課税する地方税です。税率は固定資産税評価額の3%または4% となっており、不動産を取得してから、半年後くらいに都道府県から納税通知書が届いて納税をすることになります。
次に「登録免許税」とは、登記をする際に課税される税金で、不動産売買の場合は登記を入れる買主が負担する税金です。税率は土地が2%(軽減税率1.5%)、建物が2%(軽減税率0.3%)となります。
このように、売主Aから買主Bが不動産を購入すると、不動産取得税と登録免許税が課税されることとなります。
ところが、買主Bが不動産会社ですでに転売先の目星がついている場合、買主Bとしてはすぐ転売するので、所有権移転登記で発生する不動産取得税や登録免許税を回避したいでしょう。そこで、買主Bへの登記を中間省略して直接転売先である買主Cに登記を移す、というわけです。
これが、不動産会社が中間省略で売買契約をしたいいちばんの理由なのです。
「中間省略」の問題点
中間省略による売主側の問題点、それは、不動産が相場よりも安く買われてしまうことです。
先ほどの例で言うと、不動産会社の買値は2000万円ですが、その不動産会社が転売している金額は2300万円です。
単純に考えて、本来であれば売主は2300万円くらいの相場で売却できたはずです。ところが中間省略によって、差額の300万円の利益が不動産会社に行ってしまうのです。
不動産を買い取ってからしばらく経ったタイミングであれば、まだ納得できるでしょう。しかし、中間省略の場合は売買契約を結んでからおよそ3ヶ月以内には決済するため、ほぼ売買契約の段階で転売先は決まっているのです。
この仕組みを知ると、売主としては「だったらはじめから買主Cに2300万円で売らせてよ」と思いますよね。
ただ、不動産会社はこのような仕組みを詳しく説明せず、さも通常の売買であるかのように売買契約を結ぶため、売主の多くはすでに転売先が決まっていることに気がつかないのです。
「中間省略」の見分け方
では、中間省略かどうかはどこで見分ければよいのでしょうか。
中間省略で安く不動産会社に買い取られないためには、売買契約書の約款の「所有権移転の時期」の記載事項を確認する必要があります。
通常の売買の場合、次のような記載がされています。(※あくまで一例です)
「本物件の所有権は、買主が売主に対して売買代金全額を支払い、売主がこれを受領したときに売主から買主に移転します」
ところが、中間省略の場合は次のような記載になります。
「買主は、売買代金金額の支払いをするときまでに、本物件の所有権の移転先となる者を指定し、売主は、買主の所有権等の移転先の指定及び売買代金金額の支払いを条件として、第三者に対して本物件の所有権を直接移転します。」
少々意味がわかりにくいですが、要するに転売して中間省略で登記します、という意味のことが書いてあるはずです。
おわりに
このように、中間省略は媒介する買主にとっては不動産取得税や登録免許税は回避できるメリットがあり、さらに相場価格と実際の販売額の差分を取得することができますが、売主にメリットがないのです。
また、中間省略の契約書は通常の売買に比べ、約款が複雑になっています。売買契約書に署名捺印する前によく読んで確認し、売ろうとしている価格が本当に適正な価格なのかどうか判断しましょう。
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