税理士との顧問契約で確認すべき6つのこと〜トラブル防止のための注意点

経営者にとって、経営のパートナーやアドバイザー的な存在ともいえる税理士。そのため、顧問税理士選びは重要な選択となります。
料金やサービス内容は税理士事務所ごとに異なるため、よく把握せずに契約を締結してしまうと、顧問契約後の不満やトラブルにもつながりかねません。そこでこの記事では、税理士との顧問契約時に注意すべき点を解説します。
目次
税理士との顧問契約前に確認しておくこと
まず、税理士との顧問契約を締結する前に「ご自身が税理士に求めていること」を一度洗い出しておきましょう。
税理士事務所も得意分野やサービス内容、事務所の特色が多様化しています。サービス内容を絞って低価格化を追求する事務所もあれば、ほかの事務所にはない高品質なサービスを提供する事務所もあります。
以下に掲げるポイントを中心に、ご自身のニーズを整理してみてください。その内容が税理士事務所の方向性と合致しているか確認することで、より良い顧問契約を結ぶことができます。
顧問料(税理士報酬)
まず、判断基準として欠かせないものに顧問料があげられます。
一般的に個人事業主であれば月額15,000円~、法人であれば月額30,000円~としている税理士事務所が多く、売上や事業規模によって顧問料が増減するケースがほとんどです。
ただし、金額を比較する際には「顧問料には何が含まれているのか」という点にも注意しなければなりません。通常、決算報酬(個人の場合には確定申告報酬)や年末調整手続きの費用は含まれていない場合が多いですが、中には顧問料に含まれているケースもあります。
また、領収書や請求書などの仕訳を丸投げする「記帳代行」を依頼する場合には、顧問料が増額するケースがほとんどです。
単に月額の顧問料だけを比較せず、税理士へ依頼する業務全体での料金を比較することが好ましいでしょう。
訪問頻度
料金を下げたい場合は、訪問頻度を減らすと月額顧問料が安くなるケースがあります。また、税理士に来社してもらうのではなく、自らが税理士事務所へ訪問する形式にしたり、オンライン形式にすることでも、顧問料が下がる場合があります。
顧問契約を検討している税理士事務所があれば、訪問頻度や訪問形式によって顧問料が変わるかどうか確認してみましょう。
決算対策
決算対策とは、決算を迎える前に当期利益および納税額を試算し、節税や利益確保のための対策をすることをいいます。
対策をするか否かで、手元に残るお金や納税額にかなり差が生じる可能性もあるのです。
そのため、どのような決算対策ができるかの相談をはじめ、決算書類の作成も請け負ってもらえるのかは確認しておきましょう。
ただし、決算対策の相談が決算直前のタイミングになってしまっては、せっかく税理士に依頼しても十分な準備ができないことがあります。そのため、決算対策は最低でも2か月以上前には依頼するようにしましょう。
節税提案
「税理士なんだから節税に関する提案をしてくれるのが当然じゃないの?」と思われるかもしれませんが、低価格での顧問契約を実現するためにさまざまなサービスを削ぎ落し、申告書作成などの事務手続きの代行のみに特化している事務所も存在します。
また「顧問契約前の面談は代表税理士が対応してくれたが、いざ契約したら税理士資格のない職員が担当になった」という不満も少なくありません。
そのため、税務に関する積極的な提案を求めるのであれば、どういった節税対策ができるかを確認するほか、契約後の担当者が誰になるのか、についてもヒアリングしておくと良いでしょう。
税務調査への対応
事業を営む方の多くが「税務調査」に対して嫌なイメージがあるのではないでしょうか。
そこで、過去に税務調査対応の経験があるかどうかをそれとなく聞いてみるとよいでしょう。 経験があるという場合は、その会社や事業主はなぜ税務調査を受けたのか、税理士自身はどのように対応したのかなど、聞ける範囲で教えてもらいましょう。
というのも、税理士資格の試験には「税務調査」にまつわる科目がないため、税務調査に関して、税理士は現場経験をもって学ぶことになるのです。そのため、中には税務調査の対応が得意ではない税理士もいます。
その場合、本来納めなくても良い税金を納めることになってしまう可能性もあるため、税務調査時にどのような対応ができるかも確認しておくべき事項です。
税理士業務以外の対応など
経営者が、税理士業務の範囲を明確にご理解されているケースは多くありません。
実際は、給与計算や社会保険関連の手続きは「社会保険労務士」、補助金関連の業務は「中小企業診断士」など、専門分野が異なります。
経営していく上で、このような税理士以外の士業のサポートも望むのであれば、ワンストップで対応できるような士業間の協力体制を構築している税理士事務所が理想的です。ぜひ、事前に確認をしておきましょう。
経営相談について
税務関連の悩みと同じぐらい、自社経営についての悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。税理士の中にも、経営コンサルタントとしてアドバイスをしてくれる人がいます。
経営コンサルタントまで担える税理士であれば、顧問料も高額になることが一般的です。そうしたサービスまで求める場合は、「自社の収益を改善するにはどうしたらよいか」「経費削減の余地はあるのか」など最低限のことから、内部管理への助言や事業計画・経営計画策定の手助けまで、どの程度関わることができるのか聞いておくと良いでしょう。
顧問契約時はこのような点に注意しよう
税理士選びが完了し、顧問契約を締結することになっても気を緩めてはいけません。契約書に記載されている内容をきちんと確認せずに契約すると、後々トラブルとなりかねません。
具体的に契約締結時にはどのような点に注意すべきなのか、順番に見ていきましょう。
委任する業務内容や料金
契約を結ぶ前にあらかじめ確認していると思いますが、契約書に記載されている業務内容や料金に変更や記載漏れがないか、改めて確認するようにしましょう。
契約期間や自動更新の有無
一般的な顧問契約の場合、契約期間は1年であることが多いですが、中には複数年契約となっている場合もありますので、契約期間を確認しましょう。
また、事前に契約解除の申し出がなければ自動更新となる契約が多いため、自動更新の要件についても確認しておいてください。
契約解除についての条項
契約締結時には「契約を解除するときの方法」についての確認を失念しがちです。先述のとおり、自動更新がある場合は契約期間満了の数か月前までに解除を申し出ないと自動更新となってしまう可能性があります。
解除する場合にはいつまでに通知が必要なのか、契約時に確認するようにしましょう。また、契約期間中に解除する場合には違約金が発生するのかどうかについても、併せて確認しておくことをおすすめします。
損害賠償責任の範囲
契約を締結する際には、将来発生しうるリスクについても考慮しておかなければなりません。たとえば、税理士のミスによって事業者が損害を被った場合、税理士はどの範囲でいくらの損害賠償責任を負うのか、あらかじめチェックしておくことが好ましいでしょう。
金額としては顧問料の範囲内で設定されているケースが多いですが、中には契約書上、明記されていないケースもあります。契約締結後のトラブルを回避するためにも、事前にきちんと取り決めておきましょう。
契約書の作成は必要?
中には契約書を作成せずに実務を行うケースもあります。特段トラブルが発生しなければ問題は生じないかもしれません。
しかし、なんらかのトラブルが発生してしまった場合、それが税理士へ依頼した業務の範囲に含まれているのか、税理士側の責任範囲はどの程度なのかなど、契約書上で明らかになっていなければ、問題解決が遠のきます。
そのため、税理士へ顧問契約を依頼する場合には、必ず契約書を締結するようにしておきましょう。
契約書に貼る印紙について
税理士との顧問契約が印紙税の課税文書に該当するかどうかの判断は、それが「委任契約」か「請負契約」なのかによって異なります。収入印紙は、委任契約であれば不要ですが、請負契約の場合には必要です。
請負契約とは「成果物(=完成品)」がある業務を指し、具体的には申告書等の税務署類の作成が該当します。このとき、契約金額が記載されている場合は「第2号文書」、契約金額が記載されていない場合は「第7号文書」となります。
したがって、顧問契約に伴って申告手続きを依頼する場合には印紙の貼り付けが必要ということです。ただし、税理士法人ではなく個人事務所だった場合は、契約金額が記載されていても第2号文書となります。
印紙の貼り付けが不要になるケースとしては、電子契約の場合や、契約の内容が税務相談や書類チェックのみなど成果物が発生しない場合が挙げられます。
おわりに
上述した内容のほか、税理士へ気軽に質問ができる関係性を築くことも非常に重要です。コミュニケーションの取りやすさも、ひとつの判断基準にされるとよいでしょう。本記事でお伝えした内容をもとに、後悔のない税理士選びをしていただければ幸いです。
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