自社ビル購入資金の落とし穴

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自社ビル購入資金の落とし穴

監修: 堀内 太郎 税理士

「家賃が勿体無いからそろそろ自社ビルを購入しようと思う」と考える経営者は少なくありません。このような場合は利益も出ているでしょうから、自社ビルの購入を検討することは正しい考え方といえます。

しかしながら、自社ビルを購入するときに予め理解しておくべき注意点があります。このページではその注意点についてご説明いたします。

目次

「家賃が勿体無いから自社ビル購入」は正しい?

「家賃が勿体無いから」という理由で自社ビルの購入を検討する会社は、大抵、売上が安定していて、利益も出ており、銀行から高い評価を得ている企業です。ですから、ここで銀行からお金を借りて自社ビルを購入し、家賃として支払っている資金を返済に充てようと考えるのは当然のことです。

この考え方自体は、間違っていません。

ところが、このような設備投資には落とし穴があるので注意が必要です。

自社ビル購入の注意点

第一の落とし穴とは、土地と減価償却費の関係にあります。

自社ビルの購入というと土地と建物を購入することになります。同じ不動産でも土地と建物では、その会計上の性質に大きな違いがあります。建物は減価償却するけど土地は減価償却しないということです。ここに大きなポイントがあります。

わかりやすく言うと建物は経費になるけど、土地は経費にならないということです。土地の購入代金は、お金は出て行きますが利益の圧縮にはならないのです。例えば、今年はたまたま1億円儲かったから1億円で土地を購入したという場合、土地購入資金として支払ったお金は経費にならないので利益の1億円に対する税金はそのままかかってきます。

融資と土地の購入資金の関係

第二の落とし穴は、自社ビルを全額融資で購入した場合の返済方法についてです。

通常、融資の返済資金は「減価償却費+税引き後利益」で計算されます。当然のことですが、銀行の返済はお金が出て行きますが経費として計上されません。さて、この計算式をもとに返済について理想的な考え方をしてみると、減価償却費が建物購入資金分の返済、税引き後利益が土地購入資金分の返済資金と考えることができます。

ここで注目して欲しいのがやはり土地購入資金分の返済です。税金がしっかりかかった後の残りの税引き後利益からしか返済に充てられないのです。

一方、もともと「家賃が勿体無いから」という理由で自社ビルを購入しようとしていたのですから、家賃分以外に余剰キャッシュが無いとなると、資金繰り上問題が生じます。

家賃は、全額経費計上しているのですが、土地購入資金の返済分は税引き後利益でしか充てられないので、税金との関係で資金ショートすることになるからです。 これは、返済が開始してから毎月毎月少しずつボディブローのように資金繰りに響いてきますので、本当に注意してください。

一方、銀行側も自社ビル購入などの大きな設備投資に対する融資には必ず当該物件を担保として差し入れるよう要求します。担保評価は、実勢価格の約8割ですので2割程度は自己資金を用意する必要があります。そうなると保全バランスの観点からも自己資金が必要です。

節税はほどほどに

このように税金のこと、融資の返済のこと、担保のことを総合的に考えると自社ビルを購入しようとするのであれば「家賃が勿体無い」という理由だけで、全額銀行から融資を受けて購入するのではなく、充実した自己資本のもとで購入することがベストです。 そもそも自己資本は、資本と税引き後の利益が蓄積したものですから、その観点からみてもうなずけます。

沢山税金を払うと自己資本が充実してきます。そうなると沢山融資が受けられます。将来自社ビルを購入したいのであれば、節税はほどほどにして、税金を沢山納めることを目標にすると良いでしょう。

寄稿担当

株式会社インペリアル・サポート「資金繰り110番」
代表取締役 神尾 えいじ
(http://www.sales-110.jp/)

このコンテンツは寄稿担当者の責任のもと作成されたものです。税理士ドットコムは内容の正確性、真実性等について責任を負いませんのでご了承下さい。なお、実際のご活用に際してはかならず税理士等の専門家にご相談ください。

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